POW BAR CROSS TALK:食べることは、生きること。そしてもっと、喜びに。

POW BAR CROSS TALK:食べることは、生きること。そしてもっと、喜びに。

小野りりあん(モデル・気候変動アクティビスト)

×

スコットメグミ (POW BARファウンダー)


「食べることは生きること」。

その言葉の中でも、POW BARが大切にしたいのは、「食べることは、喜びであること」。

おいしいものを食べて笑顔になる。
誰かと楽しい時間を分かち合う。
自然の中で、心地よく暮らす。

その喜びは、家族や仲間、生産者や地域、そして自然へとつながっていく。そんな日々の積み重ねの先に、人も地球も豊かになる暮らしがあるのではないでしょうか。

今回語り合うのは、モデル・気候アクティビストとして活動しながら、北海道・増毛町で米づくりにも取り組む小野りりあんさんと、北海道・ニセコ発のブランドPOW BARのファウンダー、スコットメグミ。

対談の舞台は、りりあんさんがお米づくりに携わる北海道・増毛町。メグミが現地を訪れ、田んぼや畑が広がる風景の中を歩きながら、二人でゆっくりと言葉を交わしました。

北海道で育ち、一度は外の世界へ出て、再び北海道へ戻ってきた二人。今はそれぞれの場所で、「食べるものをつくる」ことに向き合っています。

食べること。つくること。自然との関わり。そして、「おいしい」という喜びについて。

増毛町の風景とともに、二人の対話をお届けします。

北海道・増毛町に広がる、嘉門宏美さん(嘉もんどう問答農家)の田んぼ(撮影時:2026年初夏)。りりあんさんはここで、お米づくりを学んでいます。

お二人とも北海道で育ち、一度は外の世界へ出ています。北海道を離れたからこそ見えたこと、そして再び戻ってきた理由を教えてください。

小野りりあん(以下:りりあん):
生まれは青森県の八戸市なんですが、3歳の頃には北海道に引っ越していたので、北海道で育ったという感覚のほうが強いです。

14歳の頃からモデルの仕事で東京に通うようになり、北海道を離れる時間が増えました。だからこそ改めて、北海道って自然がすごく豊かで、食べものもおいしい場所なんだと気づいたんです。

東京では、ファッションや環境活動を通じて、家族のように思える仲間にも出会いました。それでも心のどこかには、いつか北海道に戻って暮らしたいという思いがずっとありました。これまでいろいろな場所を転々としてきたからこそ、北海道に戻るなら、今度はひとつの場所に根を下ろし、食べものをつくることや、大地と向き合うことから暮らしを始めたいと思っていたんです。そんな中で出会ったのが、北海道・増毛町で米農家を営む嘉門宏美さんでした。彼女の考え方に共感したことをきっかけに、私も増毛町でお米づくりに携わるようになりました。

スコットメグミ(以下:メグミ):
私は北海道の小清水町という、海と山に囲まれた小さな町で育ちました。高校から函館、大学から東京へ出て、その後は東京や大阪で10年ほど暮らしました。

でも都会で暮らしている間も、ずっと何か物足りなさがあったんです。北海道で当たり前に感じていた四季や自然、空気や匂いが、自分にとって大切だったんだと離れて初めて気づきました。「いつか北海道に戻ろう」という気持ちはずっと持っていましたね。

そんな時、ニセコにご縁があり、ワンシーズンだけニセコに居るつもりで北海道へ戻ってきました。その頃、友人からアーユルヴェーダの考えを取り入れたエナジーペーストをもらったことが、今のPOW BARにつながる大きなきっかけになりました。食べた瞬間「これだ!」とピンときたんです。

その頃から、もともとものづくりが好きだったこともあって、自分で何かを始めたいと思っていました。食べることも好きだったのでヴィーガンのケータリングや焼き菓子のポップアップショップなどを始めました。

そういった制作活動を行っていく中で、私が作りたいのはペーストではなく、もっと噛んで、味わって「食べること」そのものを楽しめるもの。そこから試行錯誤を重ねて、今のバーという形にたどり着きました。

嘉門宏美さん(左)と一緒に、「同じ釜の飯」を食べながら、持続可能な日常を共創するりりあんさん(右)

共に食べものを「つくること」に携わっていますが、お二人にとって「つくること」とはどんなことでしょうか。また、自然環境とどう関わることだとお考えですか?

メグミ:
「つくる」ということは、すごく影響力のあることだと思っています。自分でつくって自分で食べるだけではなく、商品として多くの人に届ける以上、どんな原材料を選び、どうつくるかが、社会や環境にも影響していく。

だからPOW BARを始めた時から、できるだけ環境への負荷を抑えながら、多くの人が食べられるものを作りたいという想いがありました。プラントベースを選んだことや、プラスチックネガティブに取り組んでいるのもその考えからです。

りりあん:
以前、自然再生について学んだ時に「人間は手を使って自然を壊すこともできるけれど、手を使って再生させることもできる。壊すだけの存在だと思わなくていい」と教えていただいたことがあって、その言葉が今も心に残っています。

例えば、田んぼの畔の草を刈るだけでも風の流れが変わり、そこにある生態系も変わっていく。自然に手を加えないことだけが正解なのではなく、人が意識的に関わることでより豊かな環境をつくれることもあるんだと気づきました。だから、できるだけ自然に影響を与えないことを目指すだけではなく、人が関わることで、その土地をより良い状態へ戻していく。そんな「再生」まで考えながら食べものをつくっていけたらいいなって。

それから農業を始めてからは、農家さんたちへの感謝も大きく変わりました。私たちが日々仕事をしたり、好きなことに時間を使ったりできるのは、農家さんがいのちの源である食べものをつくり私たちの暮らしを支えてくれているからなんですよね。本当に、農家さんってスーパーヒーローみたいな存在だと思います!

メグミ:
本当にそうですね。そうした第一次産業の価値を、食べる人へ伝えていくことは、素材を加工して商品として届けるブランドだからこそできる役割でもあると考えています。

生産者がいて、私たちのようなつくり手がいて、それを選んで食べる人がいる。その間をもっとうまく繋いで、表現していくことができたら、食を通じたより良い循環が生まれるんじゃないかな。

POW BARの理念の根本には「自分で考える人を増やしたい」という想いがあります。「おいしいから」「たまたま見つけたから」——POW BARを手に取る入り口は、何でもいいんです。そこから原材料や生産者、環境への取り組みを知ることで「自分が食べるものは、どこから来ているんだろう」「自分が選ぶことで、何につながっていくんだろう」と少しでも考えるきっかけになればいい。

だからこそPOW BARは、一部の人だけの特別なものではなく、どこにでもあって、誰もが気軽に選べる存在でありたいと思っています。

農薬を使わずに育てる田んぼでは、おたまじゃくしからかえったばかりのカエルや芹の姿も。お米とともに、さまざまな生きものが共存しています。

お二人にとって、「おいしい」とはどんなものですか?

メグミ:
私にとって「おいしい」は、思い出とすごく結びついています。小さい頃や思い出の中にある「あれ、おいしかったなぁ」という記憶は、心をじんわりと暖かくしてくれます。

味そのものだけではなくて、その時の気持ちや、一緒にいた人、過ごした時間まで含めて記憶に残っていく。だから、おいしいものって人生の一部であり、毎日を豊かに彩ってくれるものだと思っています。

りりあん:
私も最近、改めて「おいしい」が人生に与える力の大きさを感じました。アレルギーで食べられないものが多い時期があったのですが、最近また小麦を食べられるようになって。久しぶりに本当においしいパンを食べた時「私の人生から、こんなに“おいしい”が減っていたんだ!」と気づいたんです。何年も前に食べたピザの味を今でも覚えているくらい、おいしいものって、ずっと記憶に残りますよね。それだけ食べることが人生に与える喜びって、大きいんだと思います。

メグミ:
POW BARを続けてきて気づいたのも、まさに「やっぱり、おいしいって大事なんだ」ということでした。「体にいいから」「山に持っていくから」と、食べる理由はいろいろあっても、結局はみんな、おいしいものを食べたい。だからこそ、体にいいものを我慢して選ぶのではなく、まず「おいしいから食べたい」と思ってもらえるものをつくることを大切にしようと思いました。

りりあん:
「おいしい」って、すごく自然で強い入り口だと思います。難しいことを考えなくても、「おいしかったから、また食べたい」と選んだものが、実は体や環境にも配慮されていたら、それだけで自然とより良い選択につながっていく。「環境にいいから選ばなきゃ」ではなくて、「おいしいから選びたい」。その結果として、いい循環に参加できている。そんなふうに広がっていったらいいですよね。「おいしいから食べてたら、実は環境にもいいことしてた」。そういう選択が当たり前になったらいいですよね。

POW BARが大切にしている「Eating is Joy」という言葉。お二人にとって、「食べる喜び」とはどんなものでしょうか?

メグミ:
POW BARではもともと「Eating is Living ── 食べることは、生きること」という考えを大切にしてきました。「食べること=暮らし」に直結しているという、当たり前のことにあえて目を向けて、それについて考えてみませんかという社会への提案です。

でもPOW BARを続けているうちに、人にとって「食べること」は、カラダの栄養を補給する以上に「心」の栄養補給にも繋がっている。そのことが現代人にとってもっともっと大切になっていくのではないだろうか。今そのことが忘れられてはいないだろうかと感じるようになりました。「おいしい」という記憶を振り返ると、そこには「楽しかった」「うれしかった」「心が温かくなった」という感情が一緒にあることが多い。だから、体にいいだけではなく、食べることで心まで満たされるものを作りたい。「Eating is Living」から「Eating is Joy」へと進んだのは、そんな気づきがあったからです。

りりあん:
私が思う「おいしい」には、三つのレイヤーがあると思っています。

一つ目は、素材そのものがいいこと。いい素材は、自然が健やかな場所から生まれると思うんです。

二つ目は、その素材を生かす人。素材をどうしたらもっとおいしくできるか、研究心や愛情を持って料理する人は、アーティストのような存在だと思っています。

そして三つ目は、誰と、どんな気持ちで食べるか。安心できたり、楽しかったり、誰かと心がつながっていると感じられたり。

素材、それを生かす人、そして食べる時間。この三つが重なった時、食べることはすごく豊かな体験になるんじゃないかな。

メグミ:
誰と、どこで食べるかという環境も大きく関わりますよね。気心の知れた人たちと囲む食事はもちろんおいしい。でも、ちょっと人疲れしてしまったときに、一人車の中で無添加のポテトチップスを食べて「最高〜」って思う時もある(笑)。

りりあん:
それ、わかります!(笑)。だから、必ずしも誰かと囲む食卓だけが「食べる喜び」ではないんですよね。一人で好きなものを味わう時間だって、ちゃんと喜びだと思います。

メグミ:
そう考えると、食べることも、環境への向き合い方も、あまり「こうあるべき」と決めすぎなくていいのかもしれませんよね。環境のことを考える時も、100%完璧にやろうとして疲れてしまうより、70〜80%でも心地よく続けられるほうがいい。100かゼロかではなくて、「ゼロかイチか」くらいの気持ちで、まず一つやってみる。それでいいんじゃないかなって。

りりあん:
私もそう思います。まずは自分のご機嫌を取れないと、社会や環境のために何かをすることも続かないですからね。自分自身をハッピーにする努力もすること。その喜びを大切にしながら、できることを少しずつ続けていくことが大切だと思っています。

つくること、自然との関わり方、そして食べる喜びについてお話しいただきました。最後に、お二人は「食べること」から、これからどんな未来をつくっていきたいですか?

メグミ:
POW BARは今、ようやく第二フェーズに入ったような感覚があります。ブランドや生産のベースが整ってきたからこそ、これからは日本の素材を使ったアイデアや海外への展開、アンバサダーのみなさまとの活動など、バーを作って届けるだけではないことにも挑戦していきたいと思っています。

その根底にあるのは「おいしい」を入り口に、食べるものの背景にまで興味を持ってもらいたいという想いです。「おいしいから選んだ」というところから「この素材はどこでつくられているんだろう」「どんな人がつくっているんだろう」「背景にあるのはどんな想いだろう」と、自然や生産者にまで興味が広がっていく。そんなきっかけを、POW BARを通してもっとつくっていきたいです。そして、こうした選択が一部の人だけの特別なものではなく、どこにいても、誰もが自然に選べる社会になったらいいなと思っています。

りりあん:
私はこれから「食」という世界をもっと深く知っていきたいです。農業を始めたことで、食べものが生まれる場所や、そこに関わる人たちのことをもっと知りたいと思うようになりました。いろいろな農地や生産の現場を訪ねてみたいし、人と自然のどちらも大切にできるような社会の仕組みがもっと広がっていってほしい。そして、同じような未来を目指している人たちと繋がって、一緒にできることを増やしていきたいと思っています。

メグミ:
いつか一緒に、ファーム・トゥ・テーブルのようなこともやってみたいですね。森や畑の中に長いテーブルを置いて、夕方になったら灯りをともして、その土地で採れたものをみんなで囲む。何を食べるかはもちろん大切だけど、それ以上に、誰と、どこで、どんな時間を過ごすのか。そんな「食べる喜び」をテーマに感じられる場所を一緒につくれたら楽しそうです。

りりあん:
その時は、私はお米を出します!

メグミ:
いいですね!その時は私も何かつくりたいな…!みんなで食卓を囲みながら「今日はいい夜だね」って言えるような時間をつくりたいですね。




食べることは、生きること。
でも、それだけではありません。

「おいしい」と笑顔になること。
自分をちょっとご機嫌にすること。
誰かと食卓を囲むこと。
その食べものが生まれた土地や、つくった人に想いを巡らせること。

環境のために完璧である必要も、難しく考える必要もない。
「おいしいから選ぶ」「好きだから続ける」。
そんな自然な選択が、つくる人や土地、自然へとつながり、少しずつより良い循環を生み出していく。

食べることを楽しむことから、未来は少しずつ変わっていくのかもしれません。

EATING IS JOY.

おいしいから始まる、心地よい未来へ。

Interview & photos by Yuki M.



小野りりあん
モデル・気候変動アクティビスト
Instagram: @_lillianono_

14歳からモデルとして活動を始め、雑誌やファッションショーなどで活躍。地球温暖化への危機感をきっかけに、20代半ばから本格的に環境活動をスタート。現在は北海道・増毛町でお米づくりに携わりながら、ポッドキャストやSNSなどを通じて、気候変動や環境問題について発信している。

ブログに戻る